この記事の監修者

行政書士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:行政書士、土地家屋調査士。
主な取扱い専門分野:遺産相続手続き全般。

経歴:開業以来16年間、相続手続きに関する業務を全国対応で行ってます。
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認知症や知的障害の相続人は、
自分で十分な判断ができないため、
遺産分割の話し合いに参加することはできません。

そのため、相続人の中に、
認知症や知的障害の人がいる場合には、
通常の相続とは異なる手続きが必要です。

流れとしては、認知症の症状が重度の場合、
家庭裁判所で成年後見人の選任手続きをして、
認知症の相続人の代わりに、遺産分割の協議を行うことになります。

なお、成年後見人は、認知症の人の配偶者や、
4親等内の親族から家庭裁判所に申し立てて、
親族から成年後見人の候補者を上げることができます。

ただ、適当な候補者が見つからない場合には、
家庭裁判所で登録されている弁護士や、司法書士から、
家庭裁判所が選ぶことも可能です。

また、家庭裁判所に成年後見人の選任の申し立てをするには、
口頭では手続きができませんので、
必要な書類を提出する必要があります。

成年後見人の申し立てのための必要な書類としては、

・ 後見開始の申立書

・ 成年後見人候補者の住民票、戸籍の附票

・ 認知症の相続人の戸籍謄本、住民票

・ 認知症の相続人の診断書

・ 成年後見人候補者の身分証明書

・ 成年後見人登記事項証明書

以上となりますが、
他にも、必要な書類が必要になる場合もあります。

たとえば、父親が亡くなり、
母親と、その子供2人(長男、長女など)が相続人で、
母親は認知症が進んでいるといったケースがあります。

その場合、認知症の母親も、
亡くなった父親の配偶者になりますので、
相続人の1人です。

認知症の症状が重く、自分で判断することも、
字を書くことすら難しい状況であっても、
相続人から除外することはできません。

遺産分割の話し合いや、協議書への署名については、
相続人の1人でも欠けていると、
無効になるからです。

しかし、亡くなった人が残した財産を相続するためには、
遺産分割協議書、または、それぞれの相続手続き書類に、
相続人全員の署名と実印が必要になります。

そういった場合、相続人の1人である自分(長男)が、
認知症の母親の代わりに、署名や実印をして良いのかどうか、
疑問に思う人も多いです。

答えとしては、同じ相続人は、
利害関係があるため、
他の相続人を代理することはできません。

つまり、認知症の症状が重く、判断能力のない母親の代わりに、
同じ相続人の自分が、書類に署名などをしたとしても、
その書類は無効になるということです。

判断能力が無いのに、母親の手を取り、
自分が手を添えて署名できたとしても、
母親本人が判断したものでなければやはり無効です。

そのような場合には、認知症の母親のために、
成年後見人の選任を、
家庭裁判所ですべきと言えます。

ただ、成年後見制度では、
認知症の人の能力によって、
成年後見人、補佐人、補助人の3種類があります。

この内、成年後見人なら、重い認知症の人の代わりに、
遺産分割の話し合いから、
財産に関するすべての代理権を持つことになるのです。

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