この記事の監修者

行政書士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:行政書士、土地家屋調査士。
主な取扱い専門分野:遺産相続手続き全般。

経歴:開業以来16年間、相続手続きに関する業務を全国対応で行ってます。
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法定相続(ほうていそうぞく)とは、
民法で定められた相続方法によって、
遺産相続を進めることを言います。

法定というのは、
法律(民法)で定められたという意味ですので、
法定相続とは、民法で定められた相続、と言えるのです。

では、民法では、相続に関して、
一体どのようなことが書かれているかと言えば、
大きく分けて2つあります。

1つは、法定相続人についてです。
つまり、法で定められた相続人は誰になるのかについて、
民法で細かく定めているわけです。

もう1つは、法定相続分についてです。
法で定められた相続分はどのくらいになるのかについて、
法定相続人ごとに、民法で細かく定めています。

もちろん、法定相続人や法定相続分以外にも、
民法で定めている事柄はありますが、
この2つについては、最も重要な事柄と言えるのです。

では、法定相続について民法で定めているので、
その法定相続どおりに相続を進める必要があるのかと言えば、
そうではありません。

法定相続人については変わることはありませんが、
法定相続人全員の話し合いの結果、
民法で定めた法定相続分とは異なる割合で、
遺産相続を進めても構わないことになっています。

法定相続どおりに遺産相続を進めれば、
相続人間での争いに発展しにくいのですが、
法定相続分とは異なる割合で、相続を進めることも可能なわけです。

ただし、法定相続人全員の合意が必要になり、
1人でも、法定相続分以外の割合に賛成していなければ、
難しいということになります。

なお、民法では、法定相続人が誰になるのか、
法定相続人の範囲と順位について、詳しく定められていますが、
わかりやすく説明しますと、以下のようになります。

第1順位の法定相続人は、子供、孫、ひ孫の順です。

第2順位の法定相続人は、直系尊属(両親、祖父母、曾祖父母)の順です。

第3順位の法定相続人は、兄弟姉妹、甥姪の順です。

具体的には、被相続人(亡くなった方)に子供がいれば、
法定相続人は、子供全員となります。
子供が亡くなっていて孫がいれば、孫が法定相続人になります。

もし、亡くなった方に子供や孫、ひ孫がいなければ、
第2順位の亡くなった方の直系尊属(両親、祖父母、曾祖父母)が、
法定相続人となります。

ただ、両親が亡くなっていて、祖父母が生存していれば、
祖父母が法定相続人になります。

そして、亡くなった方に子供や孫、ひ孫がいなくて、
両親や祖父母、曾祖父母も全員亡くなっている状態なら、
第3順位の亡くなった方の兄弟姉妹が法定相続人となるのです。

もし、兄弟姉妹の内で、すでに亡くなっている人がいれば、
その子供(甥姪)が代わりに法定相続人となります。

また、被相続人(亡くなった方)に配偶者がいれば、
配偶者は常に法定相続人になります。

そして、法定相続分については、
配偶者と第1順位(子供や孫、ひ孫)が法定相続人なら、
配偶者が遺産全体の2分の1、第1順位が残りの2分の1です。

配偶者と第2順位(両親や祖父母、曾祖父母)が法定相続人なら、
配偶者が遺産全体の3分の2、第2順位が残りの3分の1です。

配偶者と第3順位(兄弟姉妹や甥姪)が法定相続人なら、
配偶者が遺産全体の4分の3、第3順位が残りの4分の1となります。

なお、第1順位の子供については、
亡くなった方に養子がいても、
実子と同じく法定相続人です。

法定相続分についても、
実子と養子に違いはありません。

また、亡くなった方の嫡出子(婚姻中の子供)と、
非嫡出子(婚姻してない時の子供)についても、
同じ法定相続人で法定相続分も同じです。

ただ、亡くなった方が遺言書を残していれば、
遺言書の内容が優先されます。

つまり、法定相続よりも、
遺言書の内容の方が優先されるということです。

たとえば、亡くなった方の遺言書で、
長男に全財産を相続させると書かれていれば、
その内容通りに相続を進めることが基本となります。

法定相続では、亡くなった方に配偶者と子供がいる場合、
配偶者が2分の1、子供全員で2分の1、という法定相続分になるのですが、
亡くなった方の遺言書で、長男に全部を相続させると書かれていれば、
その遺言書の内容が優先されるのです。

しかし、亡くなった方が遺言書を残していない場合には、
法定相続人全員で、遺産分割協議を行うことになります。

その際、法定相続人全員の合意があれば、法定相続に関係なく、
自由に相続分を決めることも可能ですし、
相続人の1人が、全財産を相続する、ということも可能なのです。

以上のように、法定相続で重視しなければならないことは、
法定相続人が誰になるのかという点で、
法定相続分については、必ず守らなければならないわけではないということです。

ただ、亡くなった方の法定相続人については、
民法で定められているとおり、変えることができませんので、
最初に、法定相続人が誰なのか、ということを調べる必要があります。

たとえ、法定相続人についてはわかっているつもりでも、
戸籍を確認して法定相続人を判断したら、
思っていた人と違っていた、ということもありえるからです。

また、法定相続人を調査して確定するためには、
相続人が多くても、音信不通の人や異母兄弟がいても、
相続関係者の戸籍類をすべて取得しなければなりません。

ただ、取得した戸籍類は、亡くなった方の銀行預金の相続手続きや、
不動産の相続手続きでも提出が必要とされているため、
相続手続きの段階でも使用できることになります。

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